米国企業は産業によって11種類の「セクター」に分けられています。セクターの特徴を理解することで適切なタイミングで投資を行うことができます。
11種類のセクターに関する記事はこちらです。

今回は米国株・エネルギーセクターについて解説していきます。
【この記事でわかること】
- エネルギーセクターの特徴
- エネルギーセクターの代表銘柄
- エネルギーセクターの代表ETF
- 過去10年間のセクター別パフォーマンス比較
米国株・エネルギーセクターについて
エネルギーセクターは石油・ガスに関連する企業で構成されています。業績が石油や原油価格に大きく依存しているので景気に左右されやすい特徴があります。
代表銘柄は【XOM】エクソンモービル、【CVX】シェブロン、【COP】コノコフィリップスなどがあげられます。
石油事業は「上流部門」と「下流部門」にわかれます。上流部門は原油の探鉱・開発・生産までの原油の開発を行います。一方で下流部門は精製・販売・輸送を行います。
公益事業セクターに似ていますが、エネルギーセクターは石油や原油に関するサービスを展開しています。
エネルギーセクターの特徴
エネルギーセクターの特徴は下記の通りです。
- 世界情勢など外的要因をうけやすい
- 長らくS&P500を下回っている
- 暴落率はセクター内でもトップクラス
- ボラティリティが高く、リターンが安定していない
エネルギーセクターの過去10年リターンは+4.18%でS&P500の+17.15%を大きく下回っています。景気に左右されやすい銘柄で構成されているので長期的なリターンは安定しません。
エネルギーセクターを代表する【VDE】バンガード・米国エネルギーセクターETFと【VOO】S&P500ETFの過去5年間株価推移グラフは以下の通りです。

過去5年のリターンは【VDE】バンガード・米国エネルギーセクターETF が【VOO】S&P500を大きくアンダーパフォームしています。
エネルギーセクターは長らく低迷しており、2018年から3年連続でセクターワーストの成長率となっています。石油原産国である中東やロシアの意向によって原油価格は変動するので、エネルギーセクターの株価は世界情勢に左右されます。
一方で2022年はエネルギーセクターの年になっています。
ニューヨーク商業取引所で指標となる「米国産WTI原油」の先物価格は2011年から2014年まで1バレル80~100ドルで推移していました。エクソンモービルやシェブロンの株価は2014年頃をピークに減少しています。
10月には7年ぶりに80ドルを記録するなど好調です。世界的に再生可能エネルギーへの転換が進んでおりましたが、米エネルギー情報局は、2050年の石油需要が20年比で4割増加するとの長期見通しを公表しています。
エネルギーセクターはまだまだ伸びる可能性を秘めています。
エネルギーセクターの代表銘柄
エネルギーセクターの代表銘柄は以下の通りです。
- 【XOM】エクソンモービル
- 【CVX】シェブロン
- 【COP】コノコフィリップス
- 【EOG】EOGリソーシズ
- 【SLB】シェルンベルジェ
エネルギーセクターはエクソンモービルとシェブロンが代表的な銘柄となっています。両社はダウ平均にも選出されるなど米国を代表する企業です。
エネルギーセクターETF
エネルギーセクターを代表するETFは以下の通りです。
- 【VDE】バンガード・米国エネルギーセクターETF
- 【IXC】iシェアーズ グローバルエネルギーETF
- 【XLE】エナジーセレクト・セクター SPDR ファンド
ティッカーシンボル | VDE | IXC | XLE |
純資産[十億ドル] | 7.277 | 1.803 | 34.885 |
設定日 | 01/30/2004 | 11/16/2001 | 12/22/1998 |
経費率 | 0.10% | 0.43% | 0.12% |
保有銘柄数 | 96 | 49 | 21 |
直近配当利回り | 3.96% | 4.03% | 4.06% |
過去1年リターン | 79.40% | 63.69% | 80.50% |
過去3年リターン | 7.00% | 5.60% | 7.91% |
過去5年リターン | 2.53% | 4.07% | 3.71% |
過去1年リターンは【VDE】【IXC】【XLE】全て70%前後のリターンとなっています。2020年末から2022年にかけてエネルギーセクターのリターンが大きくなっています。
過去5年間の株価推移は以下の通りです。

過去1年リターンは100%近くで推移していますが、コロナ前にようやく戻した形となっています。2017年に記録した水準にはまだ遠く及びません。
原油価格の上昇に加えて、経済活動の再開はエネルギーセクターにとって好材料となります。それでもエネルギーセクターは長期的にみると成長率は他のセクターに劣ってしまいます。
外的要因をうけやすいセクターへの投資は慎重に行う必要があります。
【VDE】バンガード・米国エネルギーセクターETF
【VDE】バンガード・米国エネルギーセクターETFは96社で構成されています。過去5年間で株価は-12.46ドル(-13.01%)となっています。
代表的な銘柄でもあるエクソンモービルとシェブロン全体の4割近く占めています。
組入上位10銘柄は以下の通りです。
ティッカーシンボル | 銘柄名 | 組入比率 |
XOM | エクソンモービル | 20.40% |
CVX | シェブロン | 16.00% |
CPO | コノコフィリップス | 7.04% |
EOG | EOGソリーシズ | 3.96% |
SLB | シュルンベルジェ | 3.49% |
MPC | マラソン・ペトロリアム | 3.43% |
PXD | パイオニア・ナチュラル・リソーシズ | 3.18% |
KMI | キンダー・モルガン | 2.88% |
WMB | ウィリアムズ・カンパニーズ | 2.66% |
PSX | フィリップス66 | 2.61% |
【IXC】iシェアーズ グローバル・エネルギーETF
【IXC】iシェアーズ グローバル・エネルギーETFは49社で構成されています。過去5年間で株価は-2.74ドル(-8.52%)となっています。
米国企業だけではなく、フランスの【TTE】トタルエナジーズ、イギリスの【BP】BP、オランダの【RDS】ロイヤル・ダッチ・シェルなども組み入れらています。
組入上位10銘柄は以下の通りです。
ティッカーシンボル | 銘柄名 | 組入比率 |
XOM | エクソンモービル | 13.48% |
CVX | シェブロン | 10.86% |
TTE | トタルエナジーズ | 6.09% |
CPO | コノコフィリップス | 4.95% |
BP | BP | 4.63% |
RDSB | ロイヤル・ダッチ・シェル | 4.56% |
ENB | エンブリッジ | 4.30% |
RDSA | ロイヤル・ダッチ・シェル | 4.12% |
EOG | EOGソリーシズ | 2.72% |
CNQ | カナディアン・ナチュラルリソーシズ | 2.53% |
【XLE】エナジーセレクト・セクターSPDRファンド
【XLE】エナジーセレクト・セクターSPDRファンド は21社で構成されています。過去5年間で株価は-10.67ドル(-15.36%)となっています。
組み入れ銘柄はVDEとあまり変わりませんが、銘柄数は3分の1程度となっています。
組入上位10銘柄は以下の通りです。
ティッカーシンボル | 銘柄名 | 組入比率 |
XOM | エクソンモービル | 22.47% |
CVX | シェブロン | 19.93% |
SLB | シュルンベルジェ | 4.79% |
EOG | EOGソリーシズ | 4.70% |
CPO | コノコフィリップス | 4.47% |
PXD | パイオニア・ナチュラル・リソーシズ | 4.23% |
MPC | マラソン・ペトロリアム | 4.19% |
WMB | ウィリアムズ・カンパニーズ | 3.46% |
PSX | フィリップス66 | 3.41% |
KMI | キンダー・モルガン | 3.28% |
S&P500セクター別パフォーマンス
S&P500セクター別パフォーマンスは以下の通りです。

11種類のセクターとS&P500の過去10年間トータルリターンは以下の通りです。
NO. | セクター | 過去10年間リターン |
1 | 情報技術 | +25.03% |
2 | 一般消費財 | +20.22% |
3 | ヘルスケア | +18.78% |
4 | 金融 | +17.55% |
5 | S&P500 | +17.15% |
6 | 資本財 | +15.16% |
7 | 不動産 | +14.13% |
8 | 素材 | +13.75% |
9 | 生活必需品 | +12.70% |
10 | 通信サービス | +12.38% |
11 | 公益事業 | +11.56% |
12 | エネルギー | +4.18% |
エネルギーセクターの過去10年リターンは+4.18%でS&P500の+17.15%を大きく下回っています。景気に左右されやすい銘柄で構成されているので長期的なリターンは安定しません。
「米国産WTI原油」の先物価格が7年ぶりに1バレル80ドルを記録したこともあり、2021年はセクタートップのリターンとなっています。世界的に再生可能エネルギーへの転換が進んでおりましたが、米エネルギー情報局は、2050年の石油需要が20年比で4割増加するとの長期見通しを公表しています。
短期的な爆発力はありますが、長期的な成長は望みにくいセクターです。
まとめ
エネルギーセクターの特徴は以下の通りです。
- 世界情勢など外的要因をうけやすい
- 長らくS&P500を下回っている
- 暴落率はセクター内でもトップクラス
- ボラティリティが高く、リターンが安定していない
エネルギーセクターの過去10年リターンは+4.18%でS&P500の+17.15%を大きく下回っています。景気に左右されやすい銘柄で構成されているので長期的なリターンは安定しません。
エネルギーセクターは長らく低迷しており、2018年から3年連続でセクターワーストの成長率となっています。石油原産国である中東やロシアの意向によって原油価格は変動するので、エネルギーセクターの株価は世界情勢に左右されます。
業績が外的要因を受けやすいので株価は安定していません。長期的な投資ではなく、短期的な運用がおすすめです。
脱炭素の流れから世界的に再生可能エネルギーへの転換が進んでおりましたが、米エネルギー情報局は、2050年の石油需要が20年比で4割増加するとの長期見通しを公表しています。
エネルギーセクターはまだ成長の余地を残していると思います。
▼エクソン・モービルの第4四半期と2021年通期決算に関する記事はこちらです。

▼シェブロンの第4四半期と2021年通期決算に関する記事はこちらです。
